こんにちは!仙台市の歯科クリニック『デンタルフラッグ・ステージ二日町』の院長 前澤訓(マエザワサトシ)です。
今回は、「上唇小帯(じょうしんしょうたい)付着異常」についてのお話です。
この言葉を初めて聞いたという方も多いかもしれませんが、実は、保育園や小学校での健診や、歯科の初診時などでよく見かけるお口の状態のひとつです。
特に小さなお子さんに多く見られ、ご家族から「これは何か問題なんでしょうか?」とご相談を受けることもしばしばあります。
今回は、この「上唇小帯とは何か?」「どんなときに注意が必要なのか?」「治療が必要になるのはどんな場合か?」について解説していきたいと思います。
上唇小帯ってどこにあるの?
まず、「上唇小帯」とは何かというと、上唇と前歯の間にある“筋(すじ)”のことです。
鏡の前で上唇をめくってみると、前歯の真ん中あたりにピンと張った筋があるのがわかると思います。それが「上唇小帯」です。
誰にでもある正常な組織なのですが、人によってこの筋の太さや位置、長さが異なります。
特に、小さいお子さんでは、この小帯が太かったり、歯ぐきの高い位置にまで伸びていたりすることがあります。
上唇小帯に“異常”ってどういうこと?
「上唇小帯付着異常」とは、この筋が本来よりも前歯側に強く付着していたり、太く発達していたりする状態を指します。
具体的には、次のような症状が見られることがあります:
- 小帯が前歯のすき間(すきっ歯)を引っ張っている
- 上唇を動かすと歯ぐきが引っ張られる
- 笑うと上唇が上がりにくい、または極端にめくれあがる
- 歯みがきの時に出血しやすい
- 発音や食べ方に影響が出る(まれに)
多くの場合は問題なく経過観察できるのですが、前歯のすき間がなかなか閉じない、矯正治療に影響するなどの理由から、小帯を切除する処置が検討されることもあります。
どんなときに治療が必要?
では、どのようなケースで歯科医院での対応が必要になるのでしょうか?以下のような状態がある場合、治療の適応になることがあります:
- 永久歯が生えても前歯のすき間が閉じない
- 歯ぐきに炎症や出血が起こりやすい
- 矯正治療の妨げになると診断された
- 発音への影響が指摘されている
- 歯みがきがしづらく、虫歯のリスクが高まっている
特に、6〜7歳以降になっても前歯のすき間が閉じない場合は、小帯が原因であることが多く、歯科医院での診察・相談をおすすめします。
上唇小帯切除ってどんな処置?
「切る」と聞くと驚かれるかもしれませんが、上唇小帯の切除は比較的簡単な小手術です。局所麻酔をして、数分で終了することが多い処置です。
また、年齢によっては処置を急がず、矯正治療の時期や永久歯の生え揃いを見てから行うこともあります。
術後は少しの違和感や腫れを感じることがありますが、数日で治まることがほとんどです。
よくあるご質問
Q. 小さい子どもでも処置できますか? → 基本的には、6歳以上で協力が得られる年齢のお子さんから処置を検討します。
Q. すきっ歯は小帯を切るだけで治りますか? → 小帯の影響が大きい場合は、切除後に自然に閉じることもありますが、矯正治療が必要になるケースもあります。
Q. 放っておくとどうなりますか? → 全く問題がないケースも多いですが、歯並びや歯ぐきの炎症に影響することもあるので、気になる場合は一度ご相談を。
まとめ
上唇小帯は、誰にでもあるお口の中の組織ですが、位置や太さによっては歯並びや口の動きに影響を及ぼすことがあります。
特に、最近では保育園・小学校の健診などで指摘されるケースが増えており、「このままでいいのかな?」とご心配になる保護者の方も多いようです。
ほとんどの場合は経過観察で大丈夫ですが、気になる症状があるときは、歯科でのチェックがおすすめです。
お子さんの健やかな口元の発育のために、気軽にご相談いただければと思います。
監修:デンタルフラッグ・ステージ二日町 院長 前澤訓(マエザワサトシ)
宮城県仙台市出身
日本歯科大学生命歯学部(東京) 口腔外科第二講座大学院卒業
2010年 デンタルフラッグ・ステージ二日町開業 院長
宮城県歯科医師会代議委員
宮城県歯科医師連盟評議委員
宮城県日本歯科大学校友会理事
社会福祉法人未来福祉会理事
仙台市立広瀬中学校校医
ミッキーこども園園医(北仙台園、八乙女園、泉中央園、八乙女中央園、榴ヶ岡公園前園)
ぶんぶん保育園園医(二日町園、小田原園)
少林寺拳法中拳士三段
(2025年7月現在)