脳梗塞や認知症と歯周病の関係

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こんにちは。仙台市青葉区二日町の歯科クリニック『デンタルフラッグ・ステージ二日町 』院長 前澤訓(マエザワサトシ)です。

「歯周病って歯ぐきの病気でしょ?」と思う方が多いかもしれません。
確かに歯周病は歯ぐきや歯を支える骨にダメージを与える病気ですが、近年では 脳梗塞や認知症とも深い関係がある ことがわかってきました。

つまり、歯ぐきの健康は「お口のこと」だけでなく、「脳の健康」にも大きく関わっているのです。

今回は、歯周病が脳に与える影響について詳しくお話ししていきますね。


歯周病と脳梗塞の関係

脳梗塞とは、脳の血管が詰まって血流が止まり、脳の一部が壊死してしまう病気です。
生活習慣病と関わりが深く、日本人の主要な死亡原因のひとつでもあります。

では、歯周病がどうして脳梗塞に関わるのでしょうか?

1. 歯周病菌が血流に乗る

歯周病が進行すると、歯ぐきから出血しやすくなります。
このとき歯周病菌が血管内に侵入し、血流に乗って全身を巡ります。

2. 血管の炎症を引き起こす

血管に入り込んだ歯周病菌や炎症物質は、血管の内側に炎症を起こします。
これが動脈硬化を進行させ、血管を狭く硬くしてしまうのです。

3. 血栓ができやすくなる

歯周病菌の中には血液を固めやすくする働きを持つものもあります。
これが脳の血管で詰まると 脳梗塞 が発生します。

実際の研究報告

  • 歯周病がある人は脳梗塞のリスクが 約2倍 高い
  • 脳梗塞患者の血管から 歯周病菌が検出された 事例がある

こうした結果から、歯周病は脳梗塞の重要なリスク因子のひとつと考えられています。


歯周病と認知症の関係

近年、注目されているのが 歯周病と認知症の関係 です。
特に「アルツハイマー型認知症」と「血管性認知症」に影響があることが指摘されています。

1. アルツハイマー型認知症との関係

アルツハイマー型認知症は、脳に アミロイドβ というたんぱく質がたまり、神経細胞が破壊されて進行する病気です。

歯周病菌の毒素(LPS)は、このアミロイドβの沈着を促す可能性があると報告されています。
つまり、歯周病の炎症が認知症の進行を加速する恐れがあるのです。

さらに、アメリカの研究ではアルツハイマー型認知症患者の脳から 歯周病菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)が検出された という驚くべき報告もあります。

2. 血管性認知症との関係

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの血管障害によって脳の血流が悪化し、認知機能が低下する病気です。
前述のように、歯周病は動脈硬化や脳梗塞のリスクを高めるため、血管性認知症の発症や悪化にも関わっていると考えられます。

3. 歯を失うことによる影響

歯周病が進行すると歯を失うことも多くなります。
歯を失うと「かむ」機能が低下し、脳への刺激が減少して認知機能が衰えやすくなるという研究結果もあります。

  • 20本以上歯が残っている人に比べ、歯が少ない人は認知症リスクが高い
  • 義歯を使ってしっかりかめる人は、認知症リスクが低い

このように、歯の有無やかみ合わせも脳の健康と密接に関わっているのです。


高齢化社会と歯周病・認知症のつながり

日本は世界有数の長寿国であり、今後さらに高齢化が進んでいきます。
「健康寿命」を延ばすためには、身体の健康だけでなく 脳の健康を保つこと が非常に大切です。

歯周病の予防や治療は、

  • 脳梗塞のリスクを下げる
  • 認知症の進行を抑える
  • 歯を残し、かむ機能を維持する

といった効果が期待でき、まさに「お口から始める脳の健康対策」といえるでしょう。


歯周病予防で脳を守る ― 今日からできること

  1. 丁寧な歯みがき
     歯と歯ぐきの境目を意識し、1日2〜3回ブラッシング。フロスや歯間ブラシも活用しましょう。

  2. 定期的な歯科検診
     自覚症状がなくても定期的にチェック。歯石除去や専門的なクリーニングで炎症を防ぎます。

  3. 生活習慣の改善
     禁煙、バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠は歯周病にも脳にもプラスです。

  4. しっかりかむ習慣
     食事のときにしっかりかむことは、脳への血流や刺激を増やし、認知症予防につながります


 まとめ

  • 歯周病は 脳梗塞や認知症のリスクを高める病気
  • 血流に乗った歯周病菌や炎症物質が血管を傷つけ、脳梗塞を起こす可能性がある
  • 歯周病菌はアルツハイマー型認知症の原因物質を増やし、進行を早めることが報告されている
  • 歯を失うこと自体も認知機能低下につながる
  • 歯周病予防は「歯を守る」だけでなく、「脳を守る」ことにもなる

「脳の病気」と「お口の病気」は、一見無関係に見えて実は深く結びついています。
日々の口腔ケアと定期検診が、脳の健康を支える第一歩です。


監修:デンタルフラッグ・ステージ二日町 院長 前澤訓(マエザワサトシ)

宮城県仙台市出身
日本歯科大学生命歯学部(東京) 口腔外科第二講座大学院卒業
2010年 デンタルフラッグ・ステージ二日町開業 院長

宮城県歯科医師会代議委員
宮城県歯科医師連盟評議委員
宮城県日本歯科大学校友会理事
社会福祉法人未来福祉会理事

仙台市立広瀬中学校校医
ミッキーこども園園医(北仙台園、八乙女園、泉中央園、八乙女中央園、榴ヶ岡公園前園)
ぶんぶん保育園園医(二日町園、小田原園)

少林寺拳法中拳士三段
(2025年4月現在)