こんにちは!仙台市の歯科クリニック「デンタルフラッグ・ステージ二日町」の院長、前澤訓(マエザワサトシ)です。
今回は「親知らずが“蓄膿症”(副鼻腔炎)を悪化させることがあるの?」というテーマについて、歯科の視点から詳しくお話ししたいと思います。
「歯」と「鼻の病気」、一見まったく関係がなさそうに見えますが、実は上の親知らずが深く関係するケースがあるんです。
蓄膿症(副鼻腔炎)とは?
まず、「蓄膿症(ちくのうしょう)」は、正式には「副鼻腔炎」と呼ばれます。顔の骨の中には「副鼻腔(ふくびくう)」という空洞があり、ここに炎症が起こることで、鼻づまりや頭痛、顔の痛み、痰がからむような咳などの症状があらわれます。
特に「上顎洞(じょうがくどう)」という副鼻腔は、頬の奥にある空洞で、実は上の奥歯(とくに親知らず)ととても近い位置関係にあるんです。
上の親知らずと副鼻腔の距離はとても近い
上顎の奥歯(上の6番・7番・8番=親知らず)は、上顎洞の床(底)に非常に近接しています。人によっては、歯の根っこが上顎洞の中に突き出しているような形になっていることもあるほど。
そのため、次のようなことが起こりえます:
- 親知らずの根の先に炎症が起こる(根尖性歯周炎)
- その炎症が上顎洞に波及して副鼻腔炎を起こす
このような「歯が原因の副鼻腔炎」は**歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)**と呼ばれています。
歯性上顎洞炎の主な症状
- 片側の頬だけが痛い、重い感じがする
- 鼻づまりが片側だけひどい
- 鼻をかむと膿のようなにおいがする
- 歯ぐきの腫れと鼻の症状が同時にある
これらの症状がある場合は、単なる蓄膿症ではなく「歯が原因」の可能性もあります。
とくに、上の親知らずが斜めに生えていたり、歯ぐきの奥にうもれているような場合には注意が必要です。
抜歯と同時に症状が改善することも
このようなケースでは、歯科医院でのレントゲンや口腔内診査によって、親知らずの炎症が原因になっているかどうかを確認します。
もし親知らずの根の先に炎症や膿が見つかった場合は、抜歯によって原因を取り除くことで、
- 頬の痛みや腫れが改善
- 鼻づまりが軽くなる
- 嫌なにおいが消える
といった副鼻腔炎の症状が良くなるケースも少なくありません。
親知らず抜歯時の注意点(上顎洞との関係)
ただし、上顎の親知らずを抜く際には、まれに以下のようなリスクもあります:
- 歯を抜いた際に上顎洞と口腔内がつながってしまう(交通)
- 「口と鼻がつながった感じがする」「息が漏れるような感覚」
これは「上顎洞と口腔との交通」と呼ばれますが、通常は小さければ自然にふさがることも多く、適切な処置を行えば大きな問題にはなりません。
親知らずの状態を正確に把握し、慎重に処置を行うことが大切です。
歯科と耳鼻科、連携して治療することも
歯が原因で副鼻腔炎が起きている場合、耳鼻科でいくら治療をしても、歯の感染源が残っていればなかなか治りません。
そのため、以下のような連携が重要になります:
- 歯科で親知らずの状態を診断し、抜歯を検討
- 耳鼻科で副鼻腔の状態を評価
- 必要に応じて、両方の治療を並行して行う
当院でも、必要に応じて耳鼻科との連携を図りながら、安全でスムーズな治療を行うよう心がけています。
まとめ
「親知らず」と「蓄膿症」、一見無関係のようで、実はとても近い場所に存在することから、炎症が波及しやすい関係にあります。
上の親知らずに違和感がある方、片側だけの鼻づまりや頬の痛みが気になる方は、もしかすると親知らずが原因になっているかもしれません。
歯科と耳鼻科の両面からのアプローチが重要なケースもありますので、「鼻の症状だけど、もしかして歯も関係あるかも?」と感じたら、ぜひ一度ご相談くださいね。
監修:デンタルフラッグ・ステージ二日町 院長 前澤訓(マエザワサトシ)
宮城県仙台市出身
日本歯科大学生命歯学部(東京) 口腔外科第二講座大学院卒業
2010年 デンタルフラッグ・ステージ二日町開業 院長
宮城県歯科医師会代議委員
宮城県歯科医師連盟評議委員かんす
宮城県日本歯科大学校友会理事
社会福祉法人未来福祉会理事
仙台市立広瀬中学校校医
ミッキーこども園園医(北仙台園、八乙女園、泉中央園、八乙女中央園、榴ヶ岡公園前園)
ぶんぶん保育園園医(二日町園、小田原園)
少林寺拳法中拳士三段
(2025年4月現在)