親知らずや虫歯が原因で起こる“顎の腫れ”

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こんにちは!仙台の歯科クリニック『デンタルフラッグ・ステージ二日町』の院長 前澤訓(マエザワサトシ)です。

今回は少し深刻なテーマ、「親知らずや虫歯が原因で起こる“顎の腫れ”」についてお話しします。実はこの腫れ、放置すると命に関わることもあるんです。

普段はあまり意識しないかもしれませんが、お口のトラブルが全身の健康に大きく影響することも。この記事では、顎の腫れがどんなサインなのか、危険な状態はどう見極めるのか、早めの対応の重要性について、やわらかい口調でわかりやすくお伝えしていきます。


親知らずや虫歯が原因で“腫れる”ことがある?

まず最初に、どうして顎が腫れるのかという点からご説明します。

親知らずや虫歯が原因で細菌感染が起こると、その炎症が歯の周囲から顎の方に広がることがあります。特に、下あごの親知らずは、奥の歯ぐきに埋もれた状態で生えていたり、歯と歯ぐきの間にすき間ができやすかったりと、汚れがたまりやすく炎症を起こしやすいんです。

そしてその炎症が深部に広がると、顔が腫れる、口が開けづらくなる、食事が困難になるなどの症状が出てきます。これは「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という細菌感染症である場合が多く、場合によっては点滴や入院が必要になることもあるのです。


放置するとどうなる?命に関わる「気道閉塞」のリスク

ここが今回、一番大事なポイントです。

炎症がさらに広がると、顎の下や舌の下に膿(うみ)がたまり、呼吸に関わる部分まで腫れてしまうことがあります。

特に注意が必要なのが「ルートヴィッヒ型蜂窩織炎(Ludwig’s angina)」と呼ばれる重篤な感染症。これは下顎の奥に炎症が及び、舌の下や喉の奥まで腫れてしまい、気道をふさぐ恐れがあるのです。

こうなると、呼吸困難や窒息の危険があり、命に関わる緊急事態になります。現代では抗生物質の発達や医療体制の整備により命を落とすことは稀ですが、それでも「甘く見てはいけない症状」であることに変わりはありません。


こんな症状が出たらすぐに受診を

では、どんな症状が危険信号なのでしょうか?以下のような症状があれば、すぐに歯科や口腔外科を受診してください。

  • 顎や頬、喉が急に腫れてきた
  • 触ると熱感がある、赤くなっている
  • 発熱や倦怠感がある
  • 口が開きにくい、ものが飲み込みづらい
  • 舌が浮いたように感じる
  • 息苦しさ、喉の痛みが強い

これらは、すでに感染が顎の奥深くまで広がっている可能性があるサインです。特に、腫れとともに発熱がある場合は、細菌感染による炎症反応が起きている可能性が高く、早めの対応が必要です。


入院や点滴が必要になることも

顎の腫れが重度の場合、抗生物質の内服だけでは効果が出ないことがあります。そのようなときには、点滴による抗生物質投与や、膿を外科的に排出する「切開排膿(せっかいはいのう)」といった処置が必要になります。

これらの治療は、歯科医院では対応しきれないケースもあり、口腔外科がある病院や、入院設備のある医療機関に紹介となることも少なくありません。

そのためにも、「腫れてから来る」のではなく、「腫れる前に対策する」ことがとても大切なのです。


そもそも“なぜ腫れる前に抜かないといけないの?”

腫れてからの処置は、患者さんにとっても体の負担が大きくなります。

特に親知らずは、まっすぐ生えていない場合や、半分歯ぐきに埋まっている「半埋伏(はんまいふく)」の状態のものは、将来的に腫れやすいリスクを抱えています。

「痛みがないから放っておこう」と思っていると、ある日突然、強い腫れや発熱が起きて、緊急で処置が必要になる…というパターンも少なくありません。

予防的な抜歯や、日頃からのチェックが、こうしたトラブルを防ぐ第一歩になります。


顎の腫れに隠れた別の病気も

ちなみに、顎の腫れがすべて親知らずや虫歯のせいとは限りません。

時には、**顎の骨にできる嚢胞(のうほう)**や、良性腫瘍、まれに悪性の病気が原因で腫れているケースもあります。

特に長期間ゆっくりと腫れてきたような場合や、片側だけ腫れていて痛みがないといったときには、しっかりとした診断が必要になります。

私たちのクリニックでは、見た目の腫れだけで判断せず、口腔外科的な視点から必要に応じて高次医療機関との連携をとるようにしています。


まとめ:腫れは“危険のサイン”かも。気になるときはすぐ相談を

顎の腫れは、単なる炎症で終わることもあれば、命に関わる深刻な病気のサインである場合もあります。

「そのうち治るかな…」と様子を見るよりも、「ちょっと気になるから聞いてみようかな」という早めの行動が、重症化を防ぐカギです。

気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談くださいね。


監修:デンタルフラッグ・ステージ二日町 院長 前澤訓(マエザワサトシ)

宮城県仙台市出身

日本歯科大学生命歯学部(東京) 口腔外科第二講座大学院卒業

2010年 デンタルフラッグ・ステージ二日町開業 院長

宮城県歯科医師会代議委員

宮城県歯科医師連盟評議委員

宮城県日本歯科大学校友会理事

社会福祉法人未来福祉会理事

仙台市立広瀬中学校校医

ミッキーこども園園医(北仙台園、八乙女園、泉中央園、八乙女中央園、榴ヶ岡公園前園)

ぶんぶん保育園園医(二日町園、小田原園)

少林寺拳法中拳士三段

(2025年4月現在)