現代の食生活が親知らずの生え方に与える影響

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こんにちは!仙台市の歯科クリニック『デンタルフラッグ・ステージ二日町』の院長、前澤訓(マエザワサトシ)です。

前回のブログでは、「日本人の中でも親知らずの本数や生え方には“地域差”や“ルーツによる違い”があるのか?」というテーマでお話ししました。

今回はその中でも特に興味深い部分——現代の食生活が親知らずの生え方に与える影響について、掘り下げてみたいと思います。


昔の日本人の食生活は“顎”を育てていた

縄文時代から江戸時代にかけて、日本人の食生活は“硬いもの”が中心でした。例えば:

  • 獣の肉や魚介類を干した保存食
  • 木の実や根菜類など繊維質が多い食材
  • 精製されていない玄米や雑穀

こうした食材を咀嚼して食べるには、強い顎とたくさんの噛む回数が必要でした。現代のように柔らかく加工された食品はなく、食事のたびに“顎をしっかり使う”ことが当たり前だったのです。

この「よく噛む」ことが、顎の発育を促し、歯がきれいに並ぶためのスペースを確保する重要な要素になっていました。つまり、昔の人たちは親知らずが生えやすい顎の構造を自然に育てていたのです。


 現代の食事が変えた“顎のかたち”

それに対して現代の私たちの食生活はどうでしょうか?

  • 柔らかい白米やパン、麺類
  • レトルトや冷凍食品など加工された食事
  • お菓子やスナックのような軽く噛める食品

このように“噛まずに食べられる”食べ物が圧倒的に増えています。実際、戦後から現代にかけて、日本人の咀嚼回数は1食あたり平均約30%も減っているというデータもあります。

その結果、顎の発達が十分にされないまま大人になるケースが増え、歯がきれいに並ぶスペースが足りなくなることが問題視されています。とくに影響が出やすいのが、最後に生えてくる親知らずです。


「親知らずが生えない=進化」なのか?

最近では、「親知らずがそもそも存在しない」「1本も生えてこない」という人も少なくありません。これについては“進化”の一種と考える研究者もいます。

  • 現代人の体は、使わなくなった機能を自然と省略するように変化していく
  • 噛む必要が少なくなったことで、親知らずを使う機会が減り、退化している

こうした背景から、「親知らずがない人」は“進化型”とも呼ばれることがあります。

一方で、親知らずがあるからといって“退化している”わけではありません。問題はスペースの有無炎症・虫歯などのトラブルが起こるかどうかです。


親知らずと食生活:実際の臨床現場で感じること

私たち歯科医師が実際に診察していると、次のような傾向を感じます。

  • 昔ながらの和食中心の生活をしてきた高齢世代には、顎がしっかりしている人が多く、親知らずがまっすぐ生えているケースも多い
  • 若い世代ほど、顎が細く、親知らずが斜めや横向きに埋まっているケースが増えている

これはまさに、食生活の違いが口腔の構造に影響を与えていることの証拠だといえるでしょう。

また、離乳食の段階から「柔らかいものを与えすぎない」「しっかり噛ませる」ことの重要性も見直されています。


未来の食文化と親知らずの行方

将来的には、もしかすると親知らずという存在自体がなくなっていくのかもしれません。

  • 噛む力を必要としない食文化が定着
  • 医療技術の進歩により、早期に抜歯することが一般的になる
  • 遺伝的に親知らずが生えない人が増える

こうした要素が重なれば、「親知らず」という言葉が歴史の中に残るだけの存在になる日も来るかもしれません。


まとめ:食生活が“歯の未来”を左右する

親知らずの生え方や有無には、遺伝的な要因に加えて、私たちの日々の食生活が深く関係しています。

柔らかい食事ばかりが悪いというわけではありませんが、“しっかり噛む習慣”を意識することは、顎の発育や歯並びにとってとても大切です。

親知らずがまっすぐ生えるかどうか、そもそも生えてくるかどうかは、“あなたの顎”と“生活習慣”の合わせ技。

これを機に、ご自身の食習慣や咀嚼の仕方を振り返ってみてはいかがでしょうか?

親知らずのことで気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。


監修:デンタルフラッグ・ステージ二日町 院長 前澤訓(マエザワサトシ)

宮城県仙台市出身

日本歯科大学生命歯学部(東京) 口腔外科第二講座大学院卒業

2010年 デンタルフラッグ・ステージ二日町開業 院長

宮城県歯科医師会代議委員

宮城県歯科医師連盟評議委員

宮城県日本歯科大学校友会理事

社会福祉法人未来福祉会理事

仙台市立広瀬中学校校医

ミッキーこども園園医(北仙台園、八乙女園、泉中央園、八乙女中央園、榴ヶ岡公園前園)

ぶんぶん保育園園医(二日町園、小田原園)

少林寺拳法中拳士三段

(2025年4月現在)