なぜ『親知らず』と呼ばれるの?

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こんにちは!仙台市の歯科クリニック『デンタルフラッグ・ステージ二日町』の院長、前澤訓(マエザワサトシ)です。

今回は、ちょっとした番外編として、「親知らずは、なぜ“親知らず”と呼ばれるのか?」というテーマでお話ししてみたいと思います。

私たち歯科医師は日々、親知らずの診療に携わっていますが、「そもそも名前の由来ってなんだろう?」と疑問に思われた方もいるかもしれません。

今回は、その語源をひも解きながら、世界各国の呼び名や、昔はどうやって処置していたのかなど、面白エピソードも交えてご紹介します。


親知らずの“語源”とは?

「親知らず」という名前は、ちょっと切ない響きがありますよね。これは、生える時期に由来していると言われています。

親知らずは通常、10代後半から20代前半にかけて生えてくる歯です。この頃になると、多くの人がすでに親元を離れていたり、親が子どもの成長を見守れない状況になっていたりすることが多い。

つまり、「親が子どもの歯の生え変わりを見届けることができない」「親に知られずに生えてくる歯」という意味で、“親知らず”と呼ばれるようになったとされています。


世界ではどんなふうに呼ばれているの?

「親知らず」は日本独自の呼び名ですが、世界各国でもこの歯には興味深い名前が付けられています。

  • 英語:wisdom tooth(知恵の歯)
    • 若さから大人へと成長する頃に生えてくるため、「知恵がつく時期の歯」という意味合いです。
  • ドイツ語:Weisheitszahn(知恵の歯)
  • フランス語:dent de sagesse(賢さの歯)
  • スペイン語:muela del juicio(判断力の歯)

このように、欧米の言語では「成長」や「知恵」「判断力」といったポジティブな意味で名付けられていることが多いようです。日本語の「親知らず」とは、ずいぶん印象が違いますね。


昔の人は親知らずをどうしていた?

現代では麻酔も使えますし、適切な診断のもとで安全に親知らずを抜くことができますが、昔の人々はどうしていたのでしょうか?

江戸時代以前、日本では歯科医療という概念があまり確立されておらず、親知らずが痛んだときには、自力で抜いたり、町医者や寺の僧侶に抜いてもらったりしていたようです。

また、抜くのが難しい位置にある場合は、歯が自然に崩れるまで放置されたという記録もあります。今でこそ「埋伏歯(まいふくし)」という言葉もありますが、当時はそうした分類もなかったため、「何か変な歯が痛い」という程度の認識だったかもしれません。


「知恵の歯」VS「親知らず」:文化の違いが見える名前

世界の呼び名と比較すると、「親知らず」という言葉は、どこか人との“つながり”を感じさせる名前です。親元を離れ、ひとり立ちする時期に生えるこの歯には、人生の節目や成長の痛みのような意味が込められているのかもしれません。

一方、「wisdom tooth(知恵の歯)」という表現には、新たな知識や経験を積むタイミングとしてのポジティブな捉え方が感じられます。

こうした名前の違いには、国や文化によって“成長”の捉え方に違いがあるのかもしれませんね。


まとめ:呼び名ひとつにも“文化”が詰まっている

親知らずという言葉には、単なる歯の名前以上に、人生の一コマや文化的背景が反映されているのだと感じます。

現代ではレントゲ等を使って親知らずの状態をしっかり確認でき、必要に応じて抜歯や経過観察など適切な対応が可能です。かつてのように「謎の痛み」として放置する必要はありません。

“親知らず”という名前に興味を持った方は、ぜひご自身の親知らずの状態も知ってみてくださいね。


監修:デンタルフラッグ・ステージ二日町 院長 前澤訓(マエザワサトシ)

宮城県仙台市出身

日本歯科大学生命歯学部(東京) 口腔外科第二講座大学院卒業

2010年 デンタルフラッグ・ステージ二日町開業 院長

宮城県歯科医師会代議委員

宮城県歯科医師連盟評議委員

宮城県日本歯科大学校友会理事

社会福祉法人未来福祉会理事

仙台市立広瀬中学校校医

ミッキーこども園園医(北仙台園、八乙女園、泉中央園、八乙女中央園、榴ヶ岡公園前園)

ぶんぶん保育園園医(二日町園、小田原園)

少林寺拳法中拳士三段

(2025年4月現在)