なぜ“下の親知らず”は抜きにくいの?

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こんにちは!仙台の歯科クリニック『デンタルフラッグ・ステージ二日町』の院長 前澤訓(マエザワサトシ)です。

いつもご覧いただきありがとうございます。

今回は、親知らずにまつわる疑問の中でも、特に多くいただくご質問のひとつにお答えしてみたいと思います。

「なぜ“下の親知らず”は抜きにくいの?」

歯科医院で親知らずの相談をすると、「下の親知らずはちょっと大変かも」と言われることがあります。

上の親知らずは比較的すんなり抜けるのに、下の親知らずになると「腫れるかもしれませんね」とか、「少し時間がかかるかもしれません」と言われることが多いですよね。

では、なぜ“下の親知らず”は、上のものよりも抜歯が難しいとされているのでしょうか?

今回はその理由について、やさしく、そして少し専門的な視点もまじえながらご紹介いたします。


下の親知らずは“骨にしっかり埋まっている”ことが多い

まず大きな違いは、「親知らずが生えている骨の質と厚み」にあります。

上の親知らずが生えている上顎(じょうがく)の骨は、比較的柔らかく、スッと抜けやすい性質を持っています。それに対して、下の親知らずが生えている下顎(かがく)の骨は、とても硬くて密度が高いのが特徴です。そのため、歯が骨にしっかりと固定されていて、抜くのに力や工夫が必要になることが多いのです。

また、下の親知らずは「横向き」や「斜め」に生えていることも多く、場合によっては“歯ぐきや骨の中に完全に埋まっている”こともあります(これを「完全埋伏智歯」といいます)。このようなケースでは、歯ぐきを切開して、歯を分割してから取り出す必要が出てきます。


大事な神経が近くにある

下の親知らずのすぐ下には、「下歯槽神経(かしそうしんけい)」という大事な神経が走っています。この神経は、下あごの歯ぐきや、下唇の感覚をつかさどっている神経です。

親知らずの根っこがこの神経のすぐ近くにあったり、場合によっては絡んでいるような位置にある場合、抜歯によって神経が刺激されてしまい、“下唇に一時的なしびれが残る”というリスクが発生することもあります。

もちろん、こうしたリスクを避けるために、レントゲンで確認を行い、慎重に診断・処置を行います。ただし、そういった配慮が必要な分、やはり「難しい抜歯」となる傾向があります。


開口(口の開き)や顎の構造によって器具が届きにくい

下の親知らずは、位置的に“とても奥”にあります。そして、患者さんの中には「あまり口を大きく開けられない」「顎が小さい」という方も少なくありません。

そうなると、術者(歯科医師)から見ると「手元が見えにくい」「器具が入りにくい」といった問題が出てきます。

たとえば、口の中を小さなライトで照らしながら、ミリ単位の歯を扱う必要があるわけですが、それが見えない・器具が届かないとなると、処置には一層の工夫と時間が必要になります。

そのため、患者さんの顎の形や開口量も、下の親知らずを抜く難易度に影響を与える重要な要素のひとつです。


 抜歯後の腫れ・痛みが出やすい?

「下の親知らずを抜いたら、顔がパンパンに腫れた!」という経験談を耳にすることがあるかもしれません。

これは、抜歯時に歯ぐきや骨を大きく開いたり、分割して取り出したりするため、どうしても術後の“ダメージ”が大きくなることが原因のひとつです。

上の親知らずよりも出血量や腫れの程度が強くなりやすく、抜歯後の痛みも比較的長引く傾向があります。

そのため、下の親知らずを抜く際は、「腫れるかもしれませんが、数日で落ち着きますよ」といった事前の説明がなされることが多くなっています。


抜歯の難易度は“個人差”が大きい!

ここまで、下の親知らずがなぜ抜きにくいのかについて、一般的な理由を挙げてきましたが、実際には“個人差”もとても大きいです。

たとえば:

  • まっすぐ生えていて、根も短く、骨との距離もある下の親知らず → 比較的スムーズに抜けます
  • 横向きに埋まり、根が湾曲していて、神経に近接している → 難易度が高い

このように、同じ“下の親知らず”でもケースによってまったく違います。そのため、正確な診断のうえで「どの程度の処置になるか」を見極めることがとても大切なのです。


まとめ:慎重な診断と、無理のないスケジュールを

下の親知らずの抜歯は、慎重に計画することが何よりも大切です。

「痛みが出てきてから」ではなく、「早めに相談・診断を受ける」ことで、余裕を持ったスケジュールで処置ができたり、より簡単な段階で対応できたりする可能性が高まります。

「まだ痛くないけれど、気になるなあ」「レントゲンで親知らずのことを言われたけれど放置している」そんな方は、ぜひ一度、ご相談にいらしてくださいね。

一人ひとりのお口の状態に合わせたアドバイスを受けることで、不安なく、安心して向き合うことができますよ。


監修:デンタルフラッグ・ステージ二日町 院長 前澤訓(マエザワサトシ)

宮城県仙台市出身

日本歯科大学生命歯学部(東京) 口腔外科第二講座大学院卒業

2010年 デンタルフラッグ・ステージ二日町開業 院長

宮城県歯科医師会代議委員

宮城県歯科医師連盟評議委員

宮城県日本歯科大学校友会理事

社会福祉法人未来福祉会理事

仙台市立広瀬中学校校医

ミッキーこども園園医(北仙台園、八乙女園、泉中央園、八乙女中央園、榴ヶ岡公園前園)

ぶんぶん保育園園医(二日町園、小田原園)

少林寺拳法中拳士三段

(2025年4月現在)