こんにちは。仙台市青葉区二日町の歯科クリニック『デンタルフラッグ・ステージ二日町』院長 前澤訓(マエザワサトシ)です。
近年、高齢者の健康に大きな影響を与える病気として注目されているのが「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」です。
特に高齢の方や要介護の方に多く見られ、命にかかわることもあります。
そして実は、この誤嚥性肺炎と「歯周病」は深く関わっているのをご存じでしょうか?
今日は、歯周病と誤嚥性肺炎の関係、そしてその予防についてお話していきたいと思います。
誤嚥性肺炎とは?
まず「誤嚥性肺炎」とは何かを簡単に説明しましょう。
誤嚥とは、本来食道に入るはずの 食べ物や飲み物、唾液が誤って気管や肺に入ってしまうこと をいいます。
健康な若い人なら「むせる」ことで異物を外に出すことができますが、
高齢になると反射機能が低下し、誤って肺に入ったものを排出できずに炎症を起こすことがあります。
これが「誤嚥性肺炎」です。
特に要介護高齢者の死亡原因の上位に入っており、予防がとても重要とされています。
■ なぜ歯周病と関係があるのか?
では、どうして誤嚥性肺炎と歯周病が関係するのでしょうか?
そのカギは 「口の中の細菌」 にあります。
歯周病があると、歯ぐきの炎症部分や歯の周りに 大量の細菌(歯周病菌を含むバイオフィルム) が存在しています。
この細菌が唾液や痰と一緒に肺に入り込むと、肺の中で感染を引き起こし、誤嚥性肺炎につながるのです。
つまり、口の中を清潔に保てているかどうかが、誤嚥性肺炎のリスクを左右するのです。
■ 誤嚥性肺炎のリスクを高める要因
誤嚥性肺炎は、単に「食べ物を飲み込む力の衰え」だけが原因ではありません。
次のような要因が重なることでリスクが高まります。
- 歯周病や虫歯による口腔内の細菌の増加
- 唾液の分泌低下(ドライマウス)
- 入れ歯の清掃不足や不適合な入れ歯
- 加齢による嚥下反射の低下
- 要介護による歯みがき不足
- 全身の抵抗力の低下
特に「歯周病による細菌の増加」と「飲み込む力の低下」が重なると、誤嚥性肺炎のリスクは一気に高まります
口腔ケアで誤嚥性肺炎は予防できる
実は、誤嚥性肺炎は 口腔ケアによって予防効果がある ことが医学的に証明されています。
ある研究では、歯科医師や歯科衛生士による口腔ケアを行った高齢者施設では、誤嚥性肺炎の発症率が有意に低下したという報告もあります。
◆ 歯周病予防の基本
- 毎日の歯みがき
- デンタルフロスや歯間ブラシによる清掃
- 定期的な歯科検診と歯石除去
◆ 高齢者や要介護者への追加ケア
- 入れ歯の洗浄(毎日、寝る前には必ず外す)
- 舌苔(舌の汚れ)の清掃
- 口腔保湿剤の使用(唾液が減っている方)
- 専門的な口腔ケア(訪問歯科を含む)
「歯周病菌を減らすこと」こそが、肺炎のリスクを下げる一番のポイントになります。
ご家族ができるサポート
ご自分で十分に口腔ケアができない高齢者や要介護者には、ご家族や介護者の協力が必要です。
- 食後に口の中を確認し、汚れが残っていないか見る
- 入れ歯を毎晩外し、洗浄剤を使って清潔にする
- 「むせやすい」「飲み込みにくい」といった変化を見逃さない
- 定期的に歯科でチェックしてもらう
小さな習慣が、大きな病気の予防につながります。
まとめ
- 誤嚥性肺炎は高齢者に多く、命に関わる病気
- その原因のひとつが「歯周病菌を含む口腔内の細菌」
- 歯周病の予防と口腔ケアで、誤嚥性肺炎のリスクを大きく下げられる
- 家族や介護者の協力、歯科との連携が重要
歯周病ケアは、単に歯を守るだけでなく、命を守る医療でもあります。
「誤嚥性肺炎を防ぐために、今日からできる口腔ケア」ぜひ実践してみてください。
監修:デンタルフラッグ・ステージ二日町 院長 前澤訓(マエザワサトシ)
宮城県仙台市出身
日本歯科大学生命歯学部(東京) 口腔外科第二講座大学院卒業
2010年 デンタルフラッグ・ステージ二日町開業 院長
宮城県歯科医師会代議委員
宮城県歯科医師連盟評議委員
宮城県日本歯科大学校友会理事
社会福祉法人未来福祉会理事
仙台市立広瀬中学校校医
ミッキーこども園園医(北仙台園、八乙女園、泉中央園、八乙女中央園、榴ヶ岡公園前園)
ぶんぶん保育園園医(二日町園、小田原園)
少林寺拳法中拳士三段
(2025年8月現在)